2017年10月アーカイブ

車いすコンサート

先月の21日にサントリーホール ブルーローズで行われた「車いす利用者のための室内楽演奏会」。今年もプログラムの選曲と演奏を担当し、館長でチェリストの堤剛さん、ピアニスト練木繁夫さんに参加いただいて、リヒャルト・シュトラウスのヴァイオリン・ソナタ第2楽章、ショパンのバラード第2番、ショスタコーヴィチのピアノ三重奏第1番、コダーイの二重奏第1楽章、ブラームスのピアノ三重奏第1番の1楽章を演奏しました。4年前の第1回の時は、都立特別支援学校の生徒・保護者・教職員の方々51名の参加でしたが、毎年参加人数が増え、昨年は144名、今年はそれ以上の人数で鑑賞してくださいました。加えて今年は日本音楽財団のご協力のもと、一般の車いす利用者の方にも対象を広げ、1日2公演を開催しました。写真提供:サントリーホール

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ゲルネの「冬の旅」

今日はサントリーホールでマティアス・ゲルネの歌うシューベルトの「冬の旅」。この作品は、私の秋田での集中講義でも、必ず最後の締めくくりに取り上げています。ピアニストはマルクス・ヒンターホイザー。今日の演奏では取り分け15曲目の「カラス」から後、最後まで感銘を受けました。特に23曲目「幻の太陽」から最後の「辻音楽師」へは全く休みなしに繋がった曲のようにピアノが入り、ゲルネさんも繰り返し現れる単純なメロディを、ピアノの左手の5度の和音が打たれる毎に少しブレスを入れて、感情を絞り出すような歌い方。冬の旅の主人公の絶望感を美しい弱音で味わいました。最後の音が消えた後、願わくば10秒間はこの素晴らしいインタプリテーションがもたらしてくれた絶望感に静かに浸っていたかった!
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学生音コン&プレスラーさん

昨日までの2日間、サントリーのブルーローズで行われた第71回全日本学生音楽コンクールのヴァイオリン部門本選の審査員を務めました。両日ともあいにくの雨模様、それでも特に小学校の部には多くの観客が来場。小学校と中学校の1位は、予選から安定した演奏で本選でも点数も高く優勝。今後の成長が楽しみであると同時に、このまま順調に伸びていって欲しいと強く願わずにいられません。他にも個性ある演奏やこれからグッと伸びそうな才能もあり、楽しみです。中学と高校は、それぞれヴィオッティとパガニーニの協奏曲という課題曲。これは、フレーズを歌手のように歌うことと音色に変化をつけること、その結果音でイタリアオペラ的なドラマを演出することを求められるプログラムでしたから、その辺りをしっかりと考えて演奏しているかどうかがはっきり分かってしまいます。上手に表現出来ている人もいましたが、やはり音楽の根本である歌やオペラをもっと日常的に聴いて欲しいと思いました。


コンクールの審査後、隣の大ホールに移り、93歳の室内楽の巨匠ピアニスト、メナヘム・プレスラーのリサイタルを聴きました。最初の一音が鳴り響いた瞬間から、自分の呼吸も聞こえそうな程研ぎ澄まされた集中力で聞き入る聴衆。ステージを歩くのにも杖と人のアシストが必要な93歳の弱々しい体の中に、信じられないような豊かな世界が存在することに驚嘆、アンコールのショパンのノクターンとドビュッシーの「月の光」では涙腺が緩む人も多かったようです。(私もその1人でした!)


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