8月28日 MASS MoCA

 ニューヨークに来て一週間と数日が過ぎましたが、こちらは比較的涼しいので助かっています。この短い間に地震、ハリケーンの直撃と、結構刺激的な経験をしましたが、ニューヨークに着いて早々にマサチューセッツのバークシャー地方、ノースアダムスにあるMASS MoCA(マサチューセッツ現代美術館)を訪ねたことはとても深く印象に残りました。

 バークシャー地方は自然の豊かな歴史ある地域です。ボストン交響楽団の有名な夏の「タングルウッド音楽祭」や演劇のフェスティヴァルなども行われていて、ニューヨークやボストンから避暑にくるお金持ちのための別荘やペンションが点在する豊かな町と、工場が建ち並び大勢の労働者が住むニューイングランドの工業地帯が混在していました。工業地帯のノースアダムスでは、使われなくなった広大な工場を1999年に現代アートの美術館として改装しオープン、前衛アートの中心として見事に再生させました。

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 やはり印象的なのは、その広大なスペースです。その広さは都市部の美術館では不可能でしょう。フットボール場ほどの広いスペースに土を運び込み、ドイツ人アーティストKatharina Grosse(1961)がその土の山に直接ペインティングを施し、角張りそそり立った白い物体はミネラルの岩石のようです。別の惑星に降り立ったかのような感覚に陥ります。この作品は常設展示ではないので、2011年10月31日で終了します。

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 常設展示はSol Lewitt(19282007)。中期の作品に属する#422。

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全部で15枚の色のパネルが並ぶのですが、4つの色(グレー、黄、赤、青)がまず基本になり、その中の2色を掛け合わせたものが新たに6色、3色の掛け合わせが4色、4色の掛け合わせが1色、左から右へ順番に並んでいます。左の写真は4つの原色が並んでいるところ、右の写真は手前から2色×1、3色×4、4色×1が順番に奥に向かって並んでいます。微妙な曇ったニュアンスのある美しい色調は、日本人の私の感覚にとてもしっくりきます。並んだ様は、歌舞伎の引幕を思い浮かべました。

http://www.massmoca.org/lewitt/walldrawing.php?id=422

 後期の#822は、マットな黒とグロッシーな黒が壁の真ん中の曲線で2つに分かれている作品。強調された曲線のありようが、何故かしら北斎の浮世絵の波を私にイメージさせました。

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http://www.massmoca.org/lewitt/walldrawing.php?id=822

 インターンとして作品のガイドをしてくれた女性は、隣町ウィリアムズタウンにあるウィリアムズ・カレッジの学生でした。リベラル・アーツの名門校です。

8月11日 濃密な2週間

 猛暑日が続いていますが、皆様お元気でお過ごしでしょうか?私の方は元気ですが、暑い日はなるべく外出を控えるようにしています。
 7月の終わりから昨日まで、コンサートや仕事が続いていましたが、無事乗り切りました。群馬響/大野和士さんとのブリテンは、多分15年ぶり位で演奏しましたが、前回演奏した時よりも何故か曲自体の重みがより強く感じられるようになっていました。この15年の間にこの協奏曲も随分色々な演奏家に弾かれるようになりCDも数々発表されていますし、私自身も知らないうちにこの曲に対する感じ方が進化したのだろうと思います。
 群響のコンサート後、直接松本入りし、今回大人になって初めてスズキメソードの夏期学校に参加しました。私は3才半から6才まで、スズキメソードの松井宏中先生にヴァイオリンの手ほどきを受けましたので、松本で毎年開かれる夏期学校には当時3回位は参加したでしょうか。今回は4日間、講師としてゲスト・コンサートの演奏を含め、みっちりとマスタークラスなどを受け持ちました。
 私はどちらかと言うと「体育会系だね!」と表現した方もいるくらい、厳しく集中したレッスンをする方だと思っていますが、子供たちは何度ダメ出しをされても嫌な顔ひとつせず、しっかり食らいついて来てくれました。散々直した翌日のレッスンでは改善と努力の跡が見え、私もすっかり感心してしまいました。厳しい要求にもかかわらず、諦めずに最善を尽くそうとする態度は、音楽だけでなくこれから色々な分野で活躍していく上でとても役に立つと思います。楽しみです。
 昨日まで、今度の無伴奏CDの編集を行いました。発売は年末になると思いますが、震災の影響もあって延びていた編集作業の目処がついてホッとしています。
 そう言えば、伊豆にいる両親が久しぶりに東京へQoo Xieを連れてきてくれました。私のやることなら何でも真似するので、今回は音波歯ブラシを使っているところ見せて、Qooにもトライ。さすがに振動にビックリしたようで、唸って飛び退きましたが、人間用の先の細い尖った歯ブラシで歯磨きするようになりました:―)普段は母がガーゼで奥歯まで歯磨きしているそうで、虫歯の心配はないのですが、少しずつ色々なことがわかるようになってくるのは楽しいですネ。携帯でとった写真を添付します。トリミング前なので、トイプードルらしからぬ貫禄があります・・・。椅子が二つ並んでいますが、私が食事をする時には隣に座るのがQooの指定席です。


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7月13日  Small World!?

「振り込め詐欺」に変わる新手の詐欺が横行中らしい。

今日日本のニュースで、被害者になりかかった人と犯人との電話での会話の録音が報道されていました。

聞いていてびっくり。何と、私が15年近く前に、ニューヨークで遭遇した詐欺未遂事件(?)に殆どそっくり!

私の経験した詐欺は以下のようなシナリオです。

3名くらいの詐欺師が登場するのですが、最初は電話会社を語る詐欺師。「あなたのAT&T(アメリカの電話会社)のコーリング・カードが不正に使われた。警察の直通電話を教えるのでそこに連絡してください。」(このコーリング・カードとは当時電話会社が家の固定電話の顧客に発行していたもので、長距離電話などを外出先からかける時、自宅からかけるのと同じようなレートでかけられる。)

2番目は刑事役の詐欺師。疑いつつも一応言われた番号に電話してみるとディテクティヴ(警部)○○と名乗る男が出てきて、「犯人の目星はついていて、今追っているところなのだが、この手の犯罪は現行犯で逮捕するしか検挙する方法はない。犯人があなたにコンタクトをしてくるはずだから、その話に乗ってもらいたい。そうしたら逮捕できるので、協力をお願いしたい。」

3人目は犯人役。予告通り私に電話があり、(昔のことで詳細は忘れてしまったが何かの理由で)お金を工面してくれないか、とのこと。
一応そのまま電話を切って、最初の警察官役が再度電話で私に「お金を立て替えて、犯人に渡してもらえれば、逮捕後取り返して返金する。」そこまで聞いて私は主張した。「自分のお金は嫌だ。あなたのお金なら渡してあげる。」こうしてこの詐欺事件は未遂に終わったという訳です。

日本で最近流行っている詐欺は、銀行のキャッシュ・カードが不正に使われたということで警察になりすまして電話を掛けてきて、金融庁の職員と名乗るもう一人の詐欺師にカードとその暗証番号をまんまと騙し取られてしまう仕組みらしい。

今頃日本に似たような詐欺の手法が輸入されているんですね。世界は狭い、というか、広いとも言えるのかな?今頃15年前のアメリカと同じ方法で通用するとは・・・。やっぱり、What a small world!

6月29日 モダン・アート三昧

 数日前まで高関健指揮/札幌交響楽団とバーンスタインの「セレナード」を共演するため、札幌に滞在していました。雨が降ったり、曇ってどんよりすることも多かったけれど、最後の数日などは晴れ間も多く、それでも日中の最高気温が15度から17度くらいという、東京に暮らす者には信じられない過ごしやすさです。
 東京から聴きに来てくださった知人が、コンサート翌日札幌近郊を色々と案内してくれました。その中でも幻想的だったのが、夕暮れの「モエレ沼公園」。基本設計は1988年にこの地を初めて訪れたイサム・ノグチで、これは彼の最後の作品。ピラミッドや小高い山や、森や噴水などが広大な敷地に点在していて、かつてはゴミの埋立地だったところが、美しくモダンなプレイグラウンドになり、宇宙的な広がりを意識させる空間へと変貌を遂げました。ガラスのピラミッドの脇から撮った夕暮れの空の写真を添付します。

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 5月半ばから6月前半は久しぶりにニューヨークで数週間を過ごしましたが、東京へ発つ前の日、ヴァイオリニストの木村まりさんとパーク・アヴェニューで行われていたRyoji Ikedaの展覧会へ。ジュリアード時代にフックス門下でご一緒した木村まりさんは、電子音楽や、それに伴う新しいヴァイオリンの奏法などを積極的に編み出していて、現代音楽の大家として今はジュリアード音楽院で教えています。ランチの後、まりさんに誘われて現代電子音楽の作曲家、池田亮司さんの作品「Transfinite」を見にパーク・アヴェニューのArmoryへ。床と一体化した巨大なスクリーンに流れる白黒の横シマシマの不思議な映像の流れと電子音の組み合わせ。これも宇宙的で非日常的空間でした。

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http://www.armoryonpark.org/index.php/press/news/

そういえば先月25日に発売になった、新実徳英氏のヴァイオリン協奏曲第2番「スピラ・ヴィターリス」も、宇宙的な力の存在を意識させる作品です。2009年11月に仙台の青年文化センターで仙台フィルと梅田氏の指揮で世界初演したもののライヴ録音CDで、既に色々なところで高評価をいただいていて嬉しく思っています。ニュースの欄でも批評をいくつか紹介していますので、ご覧ください。




2月27日  室内楽

 再び、ながらくご無沙汰してしまいました。今年は例年より長く寒さが続いています。1月から2月にかけての活動は、運良く大雪の合間を縫った形で行なうことができましたから、本当に助かりました。
 今週末は久しぶりに秋田へ行き、6日(日)にはトリオを中心としたプログラムのコンサートが予定されています。最近室内楽のコンサートはあまりないのが残念ですが、これは私だけに限った現象ではないのではと思います。景気の良かった頃は日本各地で室内楽フェスティヴァルがあり、1週間くらいの期間を色々な組み合わせのメンバーで、室内楽の楽しみを分かち合えたものでしたが、そのような機会もこのところ減ってしまっているようです。
 最近の日経新聞にサントリーホールの館長であり世界的なチェリストである堤剛氏が書かれていましたが、室内楽は「音楽の基本」であり、音楽先進国の欧米では音楽家も聴衆も室内楽をとても大切にしている、日本もそのようになって欲しい、というような内容でした。私自身も最近、同じようなことを思うことが多く、少し前のブログにも自分の経験から「音楽を学ぶ人はソロばかりではなく、室内楽を日常的に勉強してほしい」と書きました。
 今回は秋田出身の優秀な若手で現在ドイツ在住のピアニスト佐藤卓史さん、そして同じく秋田出身で日本各地で活躍されているチェリストの羽川真介さんのお二人との共演。初めての共演になりますが、どのような音楽的対話ができるのかがとても楽しみです。
 先週2月24日に福岡にて「子供の村」のためのチャリティー・コンサートで九州交響楽団とメンデルスゾーンの有名な「ヴァイオリン協奏曲ホ短調」を弾いてきました。メンデルスゾーンはモーツアルトに匹敵するほどの早熟の神童で、14才で「真夏の夜の夢」序曲、16才では「弦楽八重奏曲」のような傑作を書いています。38才で亡くなっていますから、36才頃に書かれたこのヴァイオリン協奏曲は晩年の作品といえます。今回秋田のプログラムのトリを飾る「ピアノ・トリオ第1番」は30才になった頃の作品で、ヴァイオリン協奏曲の第3楽章と共通するような軽やかさを見せる第3楽章、叙情的で美しい第2楽章、そして哀愁と情熱に満ちた豊かさを感じさせる第1&4楽章からなる名曲。久しぶりに演奏しますが、前に弾いた時よりも、音楽の対話的構造が身近にすっと入ってくるように感じられて、今から楽しみです。
 ところで、アクロス福岡のコンサートホールのシャンデリアが、ニューヨークのメトロポリタン・オペラハウスのものとよく似ているなあ、といつも思っていたのですが、今回九響の団長の今村氏から「アクロスはNYのメトと同じ会社にシャンデリアを頼んだ」との情報を聞き、納得しました(笑)。

12月13日 秋田滞在中

 10月から始まった今年の国際教養大学での私の集中講義も、残すところ2回となりました。1回100分で計22回の講義なので、なかなか準備も大変ですが、後もう少しで出口、やっと気持ちが楽になってきました。受講生たちもきっと同じ気持ちでしょう。というわけで、これまで一か月以上、このブログを更新できずにおりましたが、今日はその間にあったことを簡単にご報告いたします。
 11月6日には秋田のアトリオン音楽ホールにて、マリンバと初めてデュオ・リサイタルを行いました。東京からわざわざ聴きにいらした方もありましたが、ありがとうございました。共演は、秋田出身でアメリカのボストンで7年間勉強し、今年からドイツで教鞭をとっている若手マリンビストの布谷史人さん。マリンバという楽器は小学校などで音楽の時間に使われ親しまれている木琴の大きいもの、と言ってよいと思いますが、「ロール」といって音を連打して厚みのある響きをだし、ホール一杯に不思議な重厚感を出すこともできる魅力的な楽器です。ただし、同じ鍵盤楽器のピアノなどとは違い、音のエッジがはっきりわかないことも多く、はじめての私はリハーサルの最初のうちなどは随分戸惑いました。
 今回はこの珍しい楽器の組み合わせに、作曲家の新実徳英先生が新作「舞踏組曲」をプレゼントしてくださり、前日にはその曲を巡っての公開講座を新実先生ご自身が行ってくださるという、大変贅沢なシリーズとなりました。これはアトリオンホールの企画したコンサートですが、私のクラスを受講している学生も聴き来て、音楽ホールで生のコンサート空間を体験し、合わせて新しい作品を積極的に受け入れる姿勢も体験するよい機会になったのではないかと思います。後で感想文を書いてもらいましたが、「新曲についてレクチャーを聞いていたので、各部分で登場する技法にすぐに気がつくことができました。半音ずつズレがあるこのモードは、普段ポップスばかり耳にしている自分にとって、新鮮な驚きでした。」などのコメントがありました。新実先生、布谷さんとの打ち上げでのスナップを掲載します。
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 11月は何かと忙しく、29日にはジュリアード時代の同級生朝川万里さんを招いてエリオット・カーターのピアノ・ソナタについての講義と演奏をしてもらいました。いわゆる伝統的な拍子のコンセプトをカーターが破り、音の流れのリズムを聴衆に伝えるためにどのような新しい試みを行ったか。その辺を含め、音楽の構成について新しい視点を得ることの出来た講義でした。
 12月1日には今度は私がバッハのシャコンヌ、ヒンデミットの無伴奏ソナタ、そしてベートーヴェンのスプリング・ソナタについての講義を交えた実演奏を行いました。バッハのシャコンヌは言わずと知れたヴァイオリン作品の最高傑作の一つですが、いわゆる変奏曲としてどのような仕組みになっていて、そして3つの部分に分けられる構造は後のクラシックの楽曲の形式とどのような共通点があるか、など。ヒンデミットは、Tonality(調性)とAtonality(無調)について語り、前に授業で挙げたシェーンベルクなども例に出しながら、ヒンデミットの調性からの開放の試みについて。そして、ベートーヴェンの「春」のソナタは、全体の構築におけるモチーフの共通性、ベートーヴェンは如何に苦労をしながら、最も美しい旋律を生み出していったか、など。
 これらの内容は、かなり専門的に聞こえる部分もあるかもしれませんが、音楽を単純に「好きか嫌いか」だけで決め付けてしまうことをやめ、より深い創造の過程を分かってもらうことが私の授業の最終的な目標です。それを私が学生にうまく伝えられたかどうか、20日に行う最後の試験である程度わかるでしょう・・・。
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 朝川万里さんと写真を掲載します。大学時代の友人とは、どれだけ年月が過ぎてもしっくりとすぐに打ち解けて関わることができるのですね。私などは学生時代、夢中で練習ばかりしていたので、今頃になってその頃の友人と懐かしく話すことができると本当に嬉しくなります。やはり若い時の友人は特別なんだなあ、と。
 後2回の講義をこなし、宿舎に運び込んだ荷物を片付けて、10月に東京から送った7つのスーツケースにもう一度詰め直し送り返して、やっと私の秋田のミッションは終了です。まるで(プチ!?)引越しです。特に冬の秋田は初めてなので、雪が積もってくると(昨日かなり降りました!)、大学と宿舎が如何に近いといっても、荷物の運搬が大変。
 もう少し余裕ができたら、来年のコンサート・スケージュールの欄を更新いたします。また近く皆様におめにかかれることを楽しみにしています。それでは、風邪など引かれず、よい師走をお過ごしください

10月23日 釣りと音コン

 秋田で3週間、みっちり集中講義のスケジュールをこなし、久しぶりに東京へ帰ってきました。

 

 家に帰る途中、新宿のユニクロで「ヒートテック」をまとめ買い。今は「ヒートテック」で靴下から手袋、ネックウォーマーまで何でも揃うのですが、やはり温かい上に薄くて肌触りの良いこの製品は、(私にとっては)快適に過ごす冬には無くてはならないものです。
 

 翌日(22日)は朝4時半に起きて準備、6時過ぎに車でピックアップしてもらい、前日買ったヒートテックで全身武装をして初めての釣りに出かけました。荒川の河川敷から釣り船に乗り、東京湾の外洋の千葉から横浜の沖辺りだったのだと思いますが、イシモチ釣りに連れて行ってもらいました。途中羽田空港の新しい滑走路の横も通りました。

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 天気はずっと曇り気味だったために日焼けの心配もなく、海の風に吹かれて気持ち良く初めての釣り体験を楽しみました。最初に釣り上げたのは何と小さなサメ!70センチくらいの小ぶりですが見るからにサメらしい口をしているので、かなりビビってしまい早々に海に返しました。その後は色々と教えていただきながら、重りを海底につけてから少し巻き上げる感覚や、魚がかかった時に巻き上げるコツとなどが少しわかった感じです。鯵やイシモチをトータルで10匹くらい釣り上げました。
 

 今日(23日)は日本音楽コンクールの本選会の審査。1位は中学3年生(15歳)の山根さんが受賞。体格的にも恵まれ、運動神経も抜群のようで、ショスタコーヴィッチの協奏曲第1番の第4楽章などは十分な音で、メリハリもあり、リズムの切れもよく、オーケストラをバックに堂々と弾き切りました。ただ速い楽章の見事さに比較すると、ゆったりした第1楽章や第3楽章の表現はまだ未熟で、そのような現象は第3次予選のベートーヴェンのソナタでも強く感じられました。第2楽章のオペラティックな歌心あふれるフレーズでは驚くほど表現力が小さくなってしまうのです。
 

 演奏家として速く弾いて喝采される時期は本当に若いうちだけです。成熟と共にゆっくりとした楽章やシンプルなフレーズで如何に自分の表現をすることが出来るか、むしろ音楽家としての個性はここに掛かってくると言っても過言では無いわけで、この1位受賞に安心せず、その部分の研究に直ぐにでも努力を当てていただきたい。何年か後にその成果を期待しています。
 

 2位になった城戸さんも3位の毛利さんも、まだ16歳。2次予選も3次予選も2人共とてもよく整えて演奏していたのが特に印象に残っていましたが、協奏曲ではもう少しオーケストラとの音響効果に注意を向けて演奏すれば、もっと観客に伝えられる表現が増えるのではないか。
 

 60人以上の音楽家を従えて協奏曲をまとめるには、リサイタルとはまた一味違うエネルギーと、メリハリを効かせるコツが必要です。私もオーケストラと共演するときは、自分の耳に聴こえている響きだけではなくて、客席にはどのように届いているかを気にするようにしています。自分の周囲では心地よく鳴っている音でも、10m以上離れた客席では何もニュアンスが伝わらないことも多いし、ステージでは気が付かないオーケストラの音との微妙な時差もあるのです。リハーサルの時に録音器を客席に置いて、後でそれを聴いてチェックしたりしますが、本当はもう一人の自分が客席に座って聴いていて、どうしたらよいかを自分に指示出来たらよいのになあ、と思うことも多々あります。
 

 ところで予選の時からイブニングドレス着用の出演者が多くいましたが、今回の本選も含め、もう少し歩く練習をしておいた方が良いのではと感じました。ステージのパフォーマンスは、一歩足をステージに踏み出したところから始まります。ステージに出て来るとき、右手でスカートを摘み上げながらゆっくりと歩く出場者が多かったのが、今回のコンクールを通して気になりました。この場合のドレスは、言うなれば仕事着です。自分の表現する音楽のイメージや、ステージでの自分の存在をプラスにサポートするための道具であり、その道具に振り回されてしまっては本末転倒です。ドレスの裾は地面に段差などがない限り、なるべく摘み上げないこと。これはイブニングドレスでは美しい姿ではありません。(先日、日本のあるファッション雑誌を見ていたら、読者モデルが長いドレスのスカートを片手で持ち上げた姿で得意そうにポーズを取っていて、仰天!) イブニングドレスのスカートは手で持ち上げたりせず、つま先でドレスの裾を蹴り上げながら、颯爽と大股に歩くのが良。もしそれで躓いてしまうのなら、きちんと歩ける程度にまで裾を短くしてもらうことです。
 

 4位になった新井さんは本選で唯一の大学生でしたが、バランスのとれた流れのある音楽的にも気を配った良い演奏で、きっと室内楽やオーケストラのリードなどでも活躍される音楽家になるのではないかとの期待を感じました。
 

 本選には残らなかった中にも優秀な人がいたと思います。岸本萌乃加さんは2次予選がとても素晴らしかったので印象に残っていますが、3次では演奏順で少し疲れがでたところがあったのかもしれません。
 

 明日からまた秋田へ行き、残り16回の集中講義を行います。


 

10月15日 もう一つのダリア園

 国際教養大学は秋田空港から車で10分もかからないところに位置していますが、大学からそれこそ10分もかからないところに、「秋田国際ダリア園」があります。先日見た湯沢市の「世界ダリア園」の素晴らしい満開のダリアに刺激され、こちらの方も見てきました。やはり色とりどり、満開に咲き乱れるダリアの存在感は圧倒的ですね。残念ながら、私が湯沢で一目ぼれした薄紫色の「メロディ・ハーモニー」はここにはありませんでしたが、幾つかよいショットが撮れたので掲載いたします。

 「冬景色」

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「美月」
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シンデレラ」(私にはこの命名には少々抵抗がありますが・・・・)
 

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そして、ダリアの丘の全体の景色です。

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10月12日 栗駒山の紅葉

 このところトレッキングにはご無沙汰していたので、今回の栗駒山は楽しみにしていました。8日金曜日の授業を終えても東京には戻らず、連休のなか日の10日にはAIU(国際教養大学)の学園祭を見物し、翌11日の「体育の日」には早朝から栗駒山を目指しました。その日は天気予報でも、3連休で唯一の紅葉狩りに最適な「晴れ日」だったはずなのに、栗駒の周辺は深い霧が立ち込め、5,6m先もよく見えないような天候。とても紅葉を愛でるどころではありません。それに登山口のある栗駒山荘周辺では、駐車場を探す車列があちこちに出来ていて、大変な混みよう。登っても何も見えないだろうし、あっさりとトレッキングは諦め、近くの小安峡やダリア園などを軽く回った後、温泉宿でゆっくりと疲れを取ることにしました。
 

 湯沢市の「世界ダリア園」では世界各国の様々な色や形のダリアが満開に咲き、なかなか見ごたえのある光景でした。ダリア園は例年8月から10月まで開園しているのですが、今年の夏は異常な暑さが続いたために8月に入ってもダリアが咲き始めず、それを知らずに来てしまったお客様には再入園のスタンプを発行するなど、ここでも異常な夏の影響があったよう。今は大きさも形も色とりどりで咲き誇り、一輪の花として見ても形の美しさや色の鮮やかさは見事です。中でも私が感銘を受けたうす紫のグラデーションが美しいダリアは、偶然にも「メロディ・ハーモニー」という命名をされたオランダ種でした。写真を載せておきます。

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 翌日12日は朝から曇っていましたが、もしかしたら山の上は昨日よりも良い天気かもしれないと思い、一緒に行ったお仲間とも相談の上、もう一度栗駒の紅葉に賭けてみることにしました。向かう途中の秋の宮から泥湯の間の山々を抜ける車道では、所々に美しい紅葉が見られ、遠くの山々も群青色のグラデーションの幻想的な影を幾重にも見せていて、広大な景色を堪能しました。途中車を降りて木々の紅葉を映したものを、添付します。

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 肝心の栗駒山は、今度は霧も無く、頂上を目指す中間地点の「昭和池」まで登って引き返しました。登山道は連日の雨続きでかなりぬかるんでいました。私は登山靴を履いていたのでそれほどの困難もありませんでしたが、普通の防水機能のないスニーカーや、中にはサンダルで歩いている人までいて驚きました。それほど難しい山でなくても、しっかりした登山靴を履いていくと泥濘や小さな沢も気にせず安心して歩けるので疲れません。連休は明けても、相変わらず大勢の登山客が犇めいている状態でしたが、イモ洗いのようになりながらも栗駒山荘の眺めの良い露天風呂に入り、気持ちの良い風と乳白色の温かいお湯で疲れを流して、すっかり満足して帰ってきました。(明日はまた講義です!)

 

 ところで、2年前の岩手・宮城内陸地震直後の10月に栗駒に初めて登った時には、登山口に至る車道にも所々滑落が見られたり、大きなひびが道路を横断していたりと、地震の揺れの大きさや恐ろしさを目の当たりにしましたが、今回は道路の整備もほとんど完了し、岩手や宮城方面からも登山ができるようになっていました。
 

9月28日 日本音楽コンクール予選審査を終えて

 

軽井沢での録音の疲れを引きずったまま、23日から6日間、朝から夕方まで座り通しで聴き続けましたが、やっと今日の夕方ですべての予選審査を終えました。演奏した皆さんも、お疲れ様。

2次予選は、シュニトケの「ヴァイオリン・ソナタ第1番」という暗譜がかなり難しい曲も含まれていたのに、止まってしまうというようなアクシデントも全く起こらず、全員見事な頑張りでした。その分、今日の3次予選になると、かなり余裕がなくなってきたところがあったようです。

プログラムはベートーヴェンの「ヴァイオリン・ソナタ第3番」と、イザイの「無伴奏ソナタ第6番」。私自身はここ数年ベートーヴェンに対しての思い入れが特に深くなってきているところですし、イザイの第6番は軽井沢で録音してきたばかりなので、自然に聴き方も厳しくなってしまいます。イザイの第6番は、スペインの名手に献呈されているだけに、技巧的にも華やかで難しいパッセージの中に、スペイン風のハバネラのリズムが散りばめられ、和声的色彩も変化に富んでいます。ここのところを十分に理解し、表現してもらいたかったのですが、前後のパッセージのつながりがプッツリ切れてしまっていたり、強調すべきリズムが出ていなかったり、ハバネラのリズム感が曖昧だったり、和声の変化がはっきりと意識されていなかったりという演奏が多く、またベートーヴェンもピアノとの対話を意識していなかったり、3楽章が激しいのみで可愛らしさが表現されていなかったり、と正直に言って結構な欲求不満が溜まりました。でも何人かの演奏の中で、意識を共有する瞬間があり、私の気持ちを少しすっきりさせてくれました。 実際のリサイタルであれば、この一次から3次予選までのプログラムが丁度一晩のリサイタル分くらいの内容ですから、3日間に分けて弾いたにしても、よい経験になったでしょう。10月23日のオーケストラとの協奏曲にも期待しましょう。  

私の方は明後日から秋田へ行き、国際教養大学での集中講義が10月4日から始まります。12月の中旬までの間に延べ45時間の講義をこなすのですが、今回は20人ほどの学生がレジスターしているようなので、例年のクラスより人数が多くマネージするのに一工夫を必要とするかもしれないということと、前回の講義から一年以上の間が空いているため、英語で講義する感覚が戻ってくるのに少し手間取りそうな予感もしています。

今回は11月6日の秋田アトリオン音楽ホールにおけるマリンバとのデュオ・コンサートに合わせて、11月5日に新実徳英氏が今回のために書き上げてくださった「マリンバとバイオリンのための組曲」について、アトリオン・ホールで一般公開(無料)の講座を行ってくださること。これは私がMCを務めます。私自身の恒例の公開講座は12月1日にAIU(国際教養大学)のレクチャー・ホールで、「バッハの無伴奏パルティータ、ベートーヴェンの「春」ソナタ、ヒンデミットの無伴奏ソナタの例からみるヴァイオリン・ソナタの変遷」(仮題)として行うつもりで、11月29日にはジュリアード時代の同級生のピアニスト朝川万里さんに「エリオット・カーターをめぐるピアノの旅」(仮題)を講義してもらう予定です。これらは一般にも無料で公開しますので、どうぞお気軽にお寄りください。