11月20日 世界初演づくし

一週間後の27日、仙台で世界初演することになっている新実徳英氏のヴァイオリン協奏曲第2番。紙に書かれた音譜が音として姿を現し、「音楽」として自分なりの意味と形が形成される段階に何とか到達、今日は新実氏に実際に演奏を聴いてアドヴァイスをしていただきました。
10月 の末から譜面を勉強し始めたときは、とにかく音を正確に取ること=左手のフィンガリングを試行錯誤しながら決定していくことから始まり、オーケストラのス コアに色鉛筆で留意すべき場所に印を付け、ただの黒い音符の列に見えていたものが、感情を伴い意味を持ったものとして自分自身に体感されるところまで持っ ていく。これは俳優が役作りをする心境に似ているのかもしれません。作品に自身を重ね合わせ、「共感」を創り出していく、という意味で。
この協奏曲では、特に第2楽章において「9度」という音程が重要な意味を持って演奏されます。特にソロの冒頭は、「9度」のままの移行で高い音域まで上り詰め、そこから一気にそのままの音程で下降していくというパッセージがあります。これは正直に言って、最初はかなり練習するのに苦労しました。というのは、「9度」 というのはオクターヴからもう一音外に広げた音程で、いわゆる不協音程ですから、二つの音の波が協和せずぶつかり合って強い振動を引き起こし、演奏してい る私の身体にビリビリと伝わってくるのです。私の耳と身体がこれに慣れるまでにはかなりの時間が掛かりましたが、御心配はいりません。聴いている方は大丈 夫。それにしても、「音」=エネルギー、これは身を持って実感しました!
 
打 ち合わせの後、世界初演作品ばかりのコンサートに招待していただきました。全音楽譜出版社主催の「四人組とその仲間たち、室内楽コンサート<打楽器の饗 宴>」。池辺晋一郎氏、新実徳英氏、西村朗氏、金子仁美氏、そして伊藤弘之氏の世界初演作品。特に新実、西村両氏の独奏マリンバのための作品群は、私自身 も来年初めてマリンバという楽器と共演する予定が入っていますから、とても興味を持って聴かせていただきました。演奏された吉原すみれさんのマリンバの音 は深く重厚で、色彩感もくっきりと美しく、素晴らしかったと思います。ヴァイオリンとマリンバの音がどのようにブレンドできるかは未知数ですが、この新た な挑戦が少し楽しみになってきました。
 
コ ンサート後のレセプションでは、私の教えている国際教養大学に何度か講義に来ていただいている西村朗氏、先日のブログにエピソードを書かせていただいた佐 藤聰明氏、そしてアメリカ留学したばかりの時に随分お世話になった猿谷紀朗氏、そして相変わらず親父ギャグ(?)全開の池辺晋一郎氏などと久しぶりにお話 することができて、とても楽しい時間があっという間に過ぎてしまいました。

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このページは、Reiko Watanabeが2010年2月16日 21:05に書いたブログ記事です。

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