10月6日 「続ける」こと

数日前に佐藤勝夫先生の指導50周年のお祝いコンサートに参加させていただきました。コンサート後のパーティーで老若男女に囲まれた佐藤先生は、ポジティブで幸せなオーラを放っていらっしゃいました。

 50 年=半世紀の間には、社会の色々なシステムも変化し、人々の好みも変わり、その中で自身のモチベーションを変わらず保ち続け、それに向かって努力を続け、 且つその努力に周りが報いてくれて、その上健康にも恵まれ、と色々考えていくと、気が遠くなります。どんな分野でも続けていくことで見えてくる「真実」が あると思いますが、それは誰にでも得られるものではありません。87歳まで弾き続けた巨匠ミルステインも、あるDVDで「自分は進化し続けるという才能を 神から与えられた」と語っています。私の師事したフックス先生も、90代になっても毎朝2時間の練習は欠かさず、終わると私に電話を掛けてきて「今日の新 しい発見」について滔々と報告(=自慢)してくれました。

 パールマンも"The Art of Violin"の中で、「40代まで弾き続けるのは奇跡に近い、その歳までにいろんな事が起こって弾けない状況になりうる可能性は高い」というような内容 のことを言っています。私もこれまで弾き続けて来られたことを感謝し、これからも自分なりに進化し続ける努力をしたいと思っています。
 
 先 日朝青龍が優勝しました。私は大相撲の熱心なファンではありませんが、気が向いた時にテレビで観戦しています。肉体が資本のスポーツ選手は、活躍できる期 間は限られますが、それにしても数々の批判にもめげず、いざという時に自分の力を100%発揮できる朝青龍の肉体と精神力はすばらしいと思います。「練習 不足だ!」という批判があっても優勝できるのだから、間違いなく超一流の能力を持った勝負師ですね。

 一度犯したミスは直ぐに修正できる 肉体の瞬発力と集中力は、音楽家としても関心を持つところ。でも、反対にそれが彼の相撲に対するモチベーションを保つこと への障害になっているのかも知れないと感じます。最大限の努力をしなくても優勝できてしまう並外れた才能、そして彼に匹敵する才能を持ち少しの油断も許さ ないライバルの不在、このことが彼の才能が最大の進化を遂げることを阻んでいるのではないか、と。

 いずれにせよ、色々な条件が重なって 才能は伸ばされるものなのかも知れませんが、またイチローのように弛まぬ自身の探究心によって、どのような状況も乗り越 え偉大な才能として花開くケースもあります。でもこの「探究心」は、先ほどミルステインが語ったように、究極の「神からの贈り物」なのかもしれません。才 能があり、神から探究心を贈られた者が真の「天才」なのかも。

このブログ記事について

このページは、Reiko Watanabeが2010年2月16日 20:57に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「10月5日 譜めくりの問題」です。

次のブログ記事は「10月13日 台北にて」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。